かきかたの本

書き方の練習

終電

アカシックというバンドの終電という曲に惚れ、ミニアルバムを買った。

終電で帰る、嫌われる前に

その歌詞は、胸にグッとくる。vo理姫の歌い方や声が、より切なさを感じさせる。一生懸命に動きながら歌う女性は、本当に魅力的だ。

思えば、5年以上聴き続けているパスピエとの出会いも、最終電車という曲だった。

終電車に飛び乗る、君の背中が嫌いよ

乗り遅れちゃえばいいのに、一寸先は闇なんちゃって

高校時代、部活を引退し、就職も決まった俺は、ほぼ毎日、放課後はすぐ家に帰り、布団の中でラジオを聞いていた。その時、当時はまだ1枚目のミニアルバムを出したばかりで全く有名ではなかったパスピエの最終電車がリクエスト曲として流れたのだ。その歌詞と、vo大胡田N氏の歌声に惹かれ、初めてCDを買った。

未だにパスピエは好きだ。あれから彼女たちは瞬く間に有名になり、アルバムも増えた。それでも俺は、あの雨の木曜日の17時に、薄暗い部屋の布団の中で聞いた最終電車が、一番好きだ。

終電、というものは、色々な気持ちを乗せて走っている。そして、そこに乗らなかった気持ちもまた、存在する。送るものと送られるもの。そこには必ず、別れが伴う。

俺はあまり電車に乗らない。故に、終電とはほぼ無縁ではあるが、だからこそ、そこに憧れに近い感情があるのかもしれない。

今夜も、何処かで誰かの想いを乗せて終電は走る。悲しみや、後悔や、そういった感情を乗せて。あるいは、涙や嗚咽を乗せて。その届かなかった気持ちは、一体何処へ向かうのだろうか。

終電の去った後、誰もいない駅のホーム。静かな線路、踏切。そこに残った想いの欠片。人知れず、深夜の静けさの中を漂うそれは、静かな雪のように降り積もり、そして夜明けの始発電車が来る頃には消えて無くなってしまうだろう。