かきかたの本

書き方の練習

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

異世界の話の序章

あの日は、本当に暑かった。と言っても、夏しかないようなこの国では、この気温はごく日常的なもので、街を歩く人々は皆、暑さに顔をしかめることさえせず、ただそれぞれの目的のために歩いていた。タオルを持っている人間は俺だけで、そのことが余計に俺に…

信号機と夜

一体、どんな権利があってお前は、俺の歩みを妨げることが出来るんだ。 赤く光る歩行者信号に向けて、俺は言う。 何の権利もないさ、俺にはな。あんたが勝手に立ち止まっているだけだろう。 深夜2時の交差点。車の通りは全くない。 顔も知らねえようなどこか…

8月31日

夏の終わり。涼しく心地いい風と、静かなひぐらしの声に乗せて、どこからか、秋の匂いがする。俺はこの、夏と秋の間の、ほんの一瞬の季節が好きだ。 山中にある静かな墓園。数年前に開かれたそこには、すでに多くの人間が眠っている。先祖を大切にするような…